FC2ブログ

ひとひらの雲

日々のこと

父の思い出 母の思い出 その2 

20181207010259a6e.jpeg


武士の娘ではなくて博士の娘

私は父に手をあげられたことがない。
うちの中の誰も父に手をあげられたことは無いと思う。

父は、感情的に怒ることのない人だった。
母がたまに怒って手をあげると、子供の前でも、母を叱った。
それをよく母が怒っていた。

だからといって、ただ優しい人ではなかった。
会社の部下が、あんな怖い人は他にはいないと言っていた。
仕事での父からのプレッシャーは相当なものだったらしい。
僕たちは部長に認めてもらうために、ただひたすら頑張ってます。酔ってニコニコしながらも、そう言っている時、顔は真剣だった。

しかしうちではお酒が入ると、楽しい人だった。
父と話を始めると終わらなくなる。
私はずっと父の相手をして、めちゃくちゃな議論をふっかけて、いつか参ったと言わせようと必死だった。
何か父の苦手な分野はないかなあ、読んでない本を読んでケムに巻くことを考えて、よく本屋に行っていた。

無茶苦茶な議論もいっぱいした。
天下国家を憂いて、平和を願う革命戦士だった父。
お父さんはなんで大きな使命を捨てて、一介の企業人に成り下がった訳?
私のどぎつい質問に、
家庭を持って、守るものがあって世界を見ないと本当のものは見えない。だから家庭を持った。
妙に納得したのを覚えている。

大人になって、アート系の本や、なるべく父の知らない作家の本を読んで、その話を吹っかける。
うん、その考えはなかなかいいぞ。
違う!
お父さんに私の話を良いか悪いか判断してもらおうと言ってるんじゃないの。
それに対して、どう思うか聞いてるのに。
私は父ほど気が長くない。

それでも、まだ私が飲めない歳までは、母は父のつまみを作ってニコニコしていた。

私が飲める歳になると、盛り上がりすぎた父と娘を見ながら、母は拗ねていた。
私はお酒の相手ばかりして、さほど母を手伝わなかったし。

母は、2人で私のことをバカにして。
そんなことを言っていた。

弟はまだ小さかった。

ある日、父が、お前の結婚式の資金、貯めておいてやったんだが、つかってしまっていいかなあ。
いいけどー、どうせそんなもんやらないし。
なんで?
実は博士号を取得するのにお金がいるんだ。
いいよ、結婚式よりそっちのがハクがつくし。
で、博士号ってなんの役に立つの?
何にも役に立たん。
いいよー。
私のために貯めておいてくれたからって、元々私のお金じゃないし。

そして私は、
武士の娘ではなく、医学博士の娘になった。
医者の資格は無い博士号だけだけれど。
今でも検索すると、医用電子工学の文献に父の名前が出て来る。

無意味な博士号より
ずっと現実に役に立ったのが発明大賞だ。
プロッターのペンを挟む動作がとても簡単にできるシステムを考えた、らしい。
父が亡くなってもう30年経つけれど、毎年父のいた会社から、お小遣いが弟のところに届く。
弟は律儀に半分を私に送ってくれる。

お父さんありがとう。


父の思い出 母の思い出 その1 



2018120708350064a.jpeg


母の留袖

それは、初台の我が家の茶の間だった。

明るい茶の間を見ながら、小学生の私は、庭に面したベランダに寄りかかってベソをかいていた。
夕ご飯の後の茶の間で母は弟と笑っていた。

私はひとりで暗いベランダで拗ねていた。

父はあの頃忙しく、夕飯に間に合わないことがいつもだった。
やっと背広を脱ぎ、母が夕飯を用意している時、ふと私を見つけた父はベランダまでやってきて、どうした?と私に聞いた。
ぐずぐず拗ねていた私は、父にぼそぼそ話した。

3人の食事が終わって、母が珍しくデザートにプリンを用意してくれていた。
私は、わーい、と、そこにあるプリンを開けて食べかけた途端、母の平手が飛んできた。ダメよ、それはTの。
だっておんなじじゃない。何が違うのよ。
手前のを取って食べただけなのに。
母がそれを弟のと思って置いただけでしょ。
なんでよ!
母は時々理不尽な事をする。
いくら弟が可愛いからって、ひっぱたく事無いじゃない。
私だって弟は母に負けないくらい可愛いし。
弟は何も知らず、母にも私にもにこにこしている。

でも、こういう時、いくら言っても母はわからない。
だいたい諦めてたんだ、母の事を。
時々めちゃくちゃな事を言うし。

それで父に話した、鼻水をすすりながら。
私は悪くない、母は誤解してる。

静かに聞いていた父が、
子供が間違えて、大人は間違えないなんてことはないんだ。
お前は悪くない、
大人も間違いをおかすんだ。
でも、お母さんを許してやれ。

わたしは、母に叩かれたことよりなにより、
父のこの一言が嬉しかった。
大人としてちゃんと扱ってもらえてる気がした。

大人も間違えるんだ。

201812070835173f3.jpeg


母の帯

新年明けたら、
長男の結婚式に母の留袖着て出るからね、お父さん、お母さん。

お義父さんありがとう 

20181101012427d87.jpeg




義父が亡くなりました。

なんやかやと、30年程一緒に暮らした日々。
と言っても、二所帯だったので、毎日お世話をしたわけではないですが。
色々あったけど、1つ屋根の下で暮らした日々は実家の両親を超えてしまった。
特に後半は、お義父さんあっての日々でした。
感謝。

あんたたちに苦労をかけると思ったら、わしは死ぬに死にきれん、と言って義母を連れて特養に行った義父。
義母はそれが不満で、一年ほどは大変な日々だった。
その後落ち着いて、穏やかな、そして諦めたような日々。
足腰が弱って杖から車椅子となって、
嚥下が悪くなり施設から入退院を繰り返すようになった。
そのあいだに、義父から愚痴を聞いたことがない。

感謝しかありません。

そして、あんなに可愛がった長男と嫁が義父の病院に会いに行った時は、残念ながら寝たまま。
その一週間後、目を開けていた義父に長男の結婚を報告して、解る?と何度も聞いたけど、虚ろな目をした義父は、ついぞ最後までうんとは言ってくれませんでした。

そして24日の明け方、連絡が来て、駆けつけた病院で、義父は、既に冷たくなりかけていた。
看護師さんが夜半に声をかけたら、息をして無かったと。

95歳と6日。
病気はなくて、死因は、老衰。
虫歯も入れ歯も無い綺麗な歯と、シミのない美しいお顔。
こんな綺麗な仏さん見たことないです、と納棺師の方に褒められました。

通夜、告別式、受付を長男と嫁が。
会計を次男が。

お陰様でお義父さんがあんなに可愛がった2人が、こうやって大人になりました。


おじいちゃん、笑ってます。

やっと窮屈な身体から解放されてご苦労様でした。

ありがとうね。
お疲れ様でした。









20181101012607c1a.jpeg




20181105231454d94.jpeg

映画 日々是好日 

20181022010101693.jpeg


見終わった後の余韻が気持ち良くて、今日は爽やかな秋晴れで、
ああこんな気持ちの日にはどうしようと、
私にしては珍しく、
美味しいおうすと季節を写した和菓子なんて、とも思いましたが、
やはりいつもの、お蕎麦と日本酒にしてしまいました。

で、映画です。

20181022010225309.jpeg


樹木希林が佇まいの美しいお茶のお師匠さんを、なんとも良い感じに演じていらして、その後、樹木希林さんは程なくお亡くなりになったので、最後にこんなに余韻のある映画で、美しい姿を日本の四季とともに演じる姿を目にできる私達は至福です。

201810220103174f9.jpeg



心から思います、私もこんな風に毎日毎日を大切に、幸せに生きていけたらなあ。
なるべくそうできたら、と思いました。

何度でも見たくなるような、とても良い映画です。

掛軸の言葉。
お茶の先生のお座敷から見える四季の移り変わり。
そして毎年繰り返される茶事の数々。
季節を表した練り切りの見事な美しさ。

そして袱紗を扱う手や所作の美しさ。

お茶は先に形があるの。
そこに後から心が入るのよ。

柔らかなユーモア。

干支の戌の抹茶茶碗
これ12年に一度しか使わないんですか?
そうねえ。
じゃあ生きてる間に3.4回?

ある日突然、今まで居た人がいなくなり、それでも淡々と毎年、季節、季節ににその月の茶事が進んでゆく。
まるで人生。

着物の優しい着方、柔らかく、キリリとしたその姿に憧れます。
樹木希林っていつからこんなに良い女になったんだっけ?

若い頃綺麗で、その後普通になっちゃうひとより、若い頃は?でも、どんどん佇まいが美しくなるひと。
羨ましく思いました。

ご冥福をお祈りします。合掌!

秋の高い空を見上げてふっと懐かしい人の微笑んだ顔を思い出すそんな映画でした。


201810220104286d7.jpeg


おまけ
お茶の先生の希林さんと、ご本人が映画のプロモートで出てきたときの着物も着方も全く違うのはなかなか。実際の希林さんは、超個性的な女優さんですもんね。
でも、気を張っていた役の中の顔と違って、実際の希林さんは、痛々しいほどにやつれていて、現状を写していました。
お疲れ様でした。

今一度、合掌!

20181022010853104.jpeg




追伸
実家の母がかなり歳が入ってからお茶を始め、うちの八畳間には釜が置いてあり、よくそこで所作を練習していたのですが、それがどうにも、いつまでたっても上達せず、赤い袱紗を広げて、えーっと、うーん、といつも呟いていました。
大丈夫なの、次のお稽古?
私は全くやる気がないので無責任な言い方で、もーちょっと何とかならないの?
まずいんじゃないの?それじゃあ。
そんな冷たい言葉を浴びせていましたっけ。

でも、お茶の花など飾ってあると、洋花にはない楚々とした美しさは覚えています。


ノクターナル・アニマルズ トム・フォード 

20181021204853d46.jpeg



夜の獣たち
眠らない獣たち
眠れない獣たち

ネタバレありです。

オープニングの肥満した巨大なヌードのダンサーには度肝を抜かれた。
都会的といえば究極のモダンな表現ではある。
退廃的な、そして、なんとも皮肉なオープニングではある。

私はアマゾンのプライムビデオで、それも通勤の電車の中で見始めたものだから、一瞬周りの目を気にして画像の方向を変えました。

その後、この肥満ヌードのダンスは、現代アートの作品だということがわかる。
現代アートのギャラリーオーナーをやって、裕福に暮らす主人公のスーザンが出てくる。
最初のヌードの踊りに漂っていた重く沈んだゴージャスな退廃はずっと続いている。

20181021205128e4d.jpeg



スーザンと2年ほど暮らしその後手酷い別れ方をしたエドワードから、20年ぶりに小説が送られてくる。
小説家になると期待して一緒になったのに、いつまでも芽が出ないエドワードに無断でお腹の子を堕してしまったスーザン。

途中から小説の中のストーリーと現実の小説を読んでいるスーザンの暮らしと、そして、エドワードと出会った頃の若くて希望に燃えていた頃の2人。
その3つの話が切り替わるように映し出され、カラーもそれぞれ違う。
そこいら辺はトムフォード鮮やか。
まるでミルフィーユのよう。

小説の中は荒野のようなザラザラした恐怖で満ちている。でも、生々しい人間臭さ。
そして、現実のスーザンの周りはシャープで都会的で、冷たくて、偽善に満ちている。
出会った頃の2人の周りはプリミティブな暖色の柔らかくて新鮮な雰囲気。

現実のスーザンは結婚した嘘くさいイケメンの夫にも堂々と不倫されている。
どうやら、スーザンはアートの道を諦め、ギャラリーオーナーになったらしい。
現在は全く幸せそうでは無く、でも、事業はそれなりにやっているのだろう、ブルジョワの空虚な目をして着飾っている。

小説の中のストーリーは、ギラギラしたサスペンスで、私にはちょっと耐え難かった。
この頃ドキドキするサスペンスにはちょっとついていけない。
どぎついものが苦手になってきているのは、やはり老化だろうか。

201810212053131ee.jpeg


所々にギャラリーのアートが挟まれ、それはストーリーを示俊する。
矢が刺さった動物
REVENGEという文字のアート
では、本当に復讐なのだろうか?

20年前に別れた女に
復讐の為に小説を書く?
それって今でも愛しているということでは無いのかな。
復縁したいという愛では無いのは解る。
でも、スーザンへの情熱が無かったら、あの小説は書けたのだろうか?
それは憎しみという情熱かもしれないけれど。
愛してると言い換えられるかもしれない。
それを復讐と呼ぶのかもしれない。

そして、最後が鮮やか。
モノクロだったスーザンの衣装が美しい深いグリーンに。
でもスーザンは全く救われない。
何もわかっていない。
いや、もしも別れた男から、小説が送られてきたら、それもスーザンに捧ぐ、という言葉を添えて。
だったら、女は現実的だから、勘違いしてしまうかも。
だからと言って会おうという気になるか、というのは別だけど。

皮肉な映画ですね。

トムフォードがデザイナーだというのもあり、やはり都会的な皮肉な世界に監督は住んでる、というように思えてならない。
じゃあ、何?
デザイナーとしての成功以外の表現を求めて。
そこで表現しきれない何かがこの映画を撮らせたの?
なんて質問してみたいトムフォードに。


2018102120541114e.jpeg